下山一二三の音楽
(青森:1930-)
国際的に著名であり、特に欧州において SHIMOYAMA
の名は、国際的な日本の前衛音楽の作曲家として非常に高い評価を受けている。そしてその作風と響きは実にユニークで、邦楽器作品が高い評価を獲得している
のはその特異性によって当然としても、どちらかといえば西洋楽器による作品の方が高く評価されているようだ。
1969年の I.S.C.M.
(第43回国際現代音楽協会主催の世界音楽祭/ハンブルグ)
で、「リフレクション」(1967) - 3群の弦楽合奏
-が入選。ヤン・クレンツ指揮の北ドイツ放送交響楽団で世界初演された。これが彼の初期の代表的な作品で、この成功が彼を国際舞台へ引き上げることになっ
た。その後、様々な音楽祭、国際作曲コンクールで入選を果たしヨーロッパ諸国での評価を定着させた。
01. 「エクソルシズム」 "Exorcism" (1970)
楽器編成: 5 人の弦楽器 (2 violin, viola, cello,
contrabass
)
委嘱: スウェーデン: アルス・ノヴァ
初演: 1970年 10 ??? (11)月 スウェーデン
作曲者の最も得意としている弦楽合奏(弦楽四重奏にコントラバスを加えた弦楽五重奏)に
よる初期の室内楽で、その後の作曲者の方向性の原点ともいえるべき作品。
「この作品はスウェーデンの演奏団体アルス・ノヴァの関係者が、偶然にも私の作品である
<リフレクション>を聴き興味を覚え、アルス・ノヴァ室内楽団の十周年記念に小編成の作品の委嘱を、と依頼されて作曲しました。これが私の最
初の委嘱作品でした。
私はハンブルク(1969年ISCM:第43回)に行って、外国の様々な作曲家の自由な創作様式に触れ、私ももっと思い切った自己主張をすべきではないか
と痛切に感じました。そして帰国してすぐ作曲に取りかかったのがこの作品なのです。
これはローマの著名な即興演奏グループ、ヌォヴァ・コンソナンザも1971年(初演の翌年ローマの日本文化協会)に、この作品を演奏したのですが、それは
全く完璧で、素晴らしい演奏でした。しかし、彼等から送られた録音テープは紛失してしまいとても残念に思っております。」(作曲家)
02. .「息」 "Breath" (1971)
楽器編成:3 女声、打楽器 + ピアノ
(女声2パートは同一の歌手による2トラック磁気テープによるラウド・スピーカー再生音でも演奏可能)
打楽器(種類):
第一奏者;
タム・タム(2:中、大)、シンバル(3:小、中、大)、古代シンバル(3)、小太鼓、大太鼓
(大)、木琴
第二奏者;
シンバル(3:小、中、大)、古代シンバル(3)、大太鼓 (非常に大きもの)、
トライアングル、ウッド・チャイム(竹の鳴子)、メタル・チャイム、ウインド・マシン(無い場
合マラカスでも可)
4種のスティック
初演: 1978 年5月9日フィンランド・ヘルシンキ、メイラハティ荘園の室内楽コンサート
女声: 平山美智子、打楽器: L・エルッキラ, T・フェルチェン,
ピアノ: ユッカ・ティエンス、指揮: カリ・ティッカ、技術: L・マッテイネン.
この作品は三つの謡曲、「翁」ここでの言葉の意味の定説は未だない。「葵の上」山伏がお
祈りの時に唱える言葉。「敦盛」念仏信者がお祈りの時に唱える言葉。その他には経文(サンスクリット語)等から作曲家自身がテクストを抽出した。
「この「息」の最初の版(合唱作品)を書き上げたころは、言葉の響きといったものにとても強い
関心があり、東北地方に伝わる様々な古い言葉を研究していました。そしてそれらの言葉を色々な形で構成してみたのです。
それとは別に他の意味で言えば、例えば、リンゴという物を示す言葉はまちまちで、日本語ではリンゴですし、英語ではアップル、ドイツ語ではアップフェルと
発音されます。こうした言葉を一度に一つの空間の中へ投げ出して、近似音の言葉による密度とその変化によって、とてもおもしろい響きを発生させるのではな
いかという発想があったのです。言葉と言葉がぶつかって生じる言葉のクラスターと言ったような現象がとても面白いのではないかと考えて見ました。私は、弦
楽合奏におけるトーン・クラスターの技法を十分に探究し、精通しており、それを他の素材、条件によって試みてみたかったのです。」(作曲家)
このCDに収録された版は初演時の録音である。
03. 「トランズマイグレーション 第2番」 "Transmigration
No.2" (1984)
楽器編成:尺八、チェロ +
ハープ(shakuhachi,Violoncello,harp)
委嘱: ムジカ・トリフォルム・アムステルダム
初演: 1984/9/14 - ケルン(ドイツ)
尺八: 遠藤一己 、チェロ: 田中雅、ハープ: テッケ・クライン
日本初演: 1984/11/29 - 石橋エオリアン・ホール(東京)
尺八: 山本邦山、チェロ: 金谷昌治、ハープ: ヨゼフ・モルナール
「この作品は1983年に渡欧した時に知り合った3人のグループ、ムジカ・トリフォル
ム・アムステルダムの依頼によって作曲しました。この題名は輪廻を意味しています。それはある音がある楽器から別の楽器へと受け渡されていく形態が、あた
かも魂が別の形で蘇るさまを想像させるところからこの作品の題名にしたのです。尺八を用いるのは「
レクイエム津軽」'80,「 巫覡」'83 に次いで3作目になります。」(作曲家)
04. 「一期の月影」 "Ichigo no Tsukikage"
(1988-89)
楽器編成: 十七絃箏、チェロ + 2チャンネル磁気テープ
委嘱: 菊地悌子 (十七絃箏奏者)
演奏者: 十七絃箏: 菊地悌子(奏者の肉声を含む)、チェロ:北本秀樹、
磁気テープ 制作: NHK電子音楽スタディオ (NHK Electronic
Music Studio)
放送: NHK-FM
音源提供: NHK
「この作品は十七絃奏者の菊地悌子さんの委嘱で書き始め、殆ど同じ頃NHKから電子音楽
スタディオを使っての作品委嘱の話があり、その両方の依頼を一度にした結果このような形になったものです。作品はあらかじめ磁気テープに録音されている音
と、十七絃及び、チェロの演奏が同時進行するよう作曲しました。十七絃とチェロは生演奏の声部なのですが、磁気テープにも演奏音が録音されておりまして、
一人で何役もやるソロ・アンサンブルの様な形式とでもいえましょうか。テープの音は素材そのものとして録音されている部分もありますが、様々な形で電気的
に変調加工している音もあります。十七絃とチェロは歴史的背景も構造も全く違うものでありますが、不思議に調和し、共通点も多々あるので非常に満足のいく
結果となりました。」
(作曲家)
05. 「渓響」 "Keikyo" (1994)
楽器編成: クラリネット(バス・クラリネット)、コントラバス、打楽器
+ 磁気テープ
作品時間 (約/分): 16(磁気テープとの同時進行のため固定時間)
磁気テープ 制作: NHK電子音楽スタディオ
委嘱: NHK
演奏者:クラリネット(バス・クラリネット): 板倉康明、コントラバス:
溝入敬三、打楽器: 永曽重光
放送初演: 1994 年6月19日NHK-FM"現代の音楽"同演奏者
舞台初演: 1994 年12月16日東京石橋メモリアル・ホール
同演奏者
音源提供:NHK
この作品は1993年後半から1994年の5月にかけて作曲された。'89年作曲の
<一期の月影>
に近い形態を持つ。曲の進行は3人の演奏する楽音と磁気テープによる音響(ラウドスピーカー)が同時進行する。視覚的には舞台上の器楽3重奏に見えるが、
実際音響的には6重奏、あるいは7重奏にも聞こえるように設計されている。「題名の「渓
響」とは"渓谷に響く音"という意味であるが、舞台上の現実の音と、それにこだまする一種デフォルメされた影のような存在のテープ音による、音の世界の交
錯をイメージした作品です。」(作曲家)
下山一二
三作品リスト
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